舞浜アンフィシアターの半円形の オープンステージをぐるりと満席の客席が囲み、きよしさんの登場を固唾を呑んで待ちました。
客席の照明が落ち、皆がまだ暗いままのステージをじっとみつめていると、流れてきたイントロは井上陽水さんの「少年時代」でした。
ステージがパッと明るくなると、デニム地をパッチワークしたロングジャケットを身にまとったきよしさんが登場しました。
”KIYOSHI special concert 2015 ~KIYOSHI'S SUMMER~”のオープニングにふさわしい夏の風を感じさせるさわやかでしっとりとした歌声でした。
歌い終えると、ステージ中央前方に駆け寄るようにして、
「舞浜、いくぜ~!」
と右こぶしを掲げてきよしさんがおっしゃったので、一気にヒートアップしたのです。
ロングジャケットを脱ぐと、黒のノースリーブのシャツにフレアーのついたベスト、パンツは黒のデニム調のぴったりしたもので、黒のレザーブーツにブーツインしてお召しになっていました。右腕には太いブレスレットが見えました。
「HOT LIMIT (ホットリミット)」(T.M.Revolution)
「シーズン・イン・ザ・サン」(TUBE)
「あー夏休み」(TUBE)
と夏のヒットソングを一気に歌ってくださいました。
「僕の青春時代に、(聴いて)励まされた曲を歌わせていただきました」
といいながらも、息がハアッ、ハアッとあがるきよしさん。
それはそうです。だって、だって、”激しめ”どころじゃない情熱歌唱だったのですもの。
「普段の氷川きよしはこんなに(ステージを)駆けずり回って歌ったりしないので、息が荒くなります」
とおっしゃりながら、またハアッ、ハアッと笑いながら息をされていたのです。
「今日は等身大でありのままの、もう1人の自分をぜひ見てください!」
とご挨拶され、”アーイ、アーイ”と(ちょっと珍しいですよね・笑)エールをかわしたのです。
ステージの基調はブルー。
上方にロイヤルブルーのドレープのついた緞帳にゴールドのフリンジが飾られていて、センターにシャンデリアが
またたいていました(このシャンデリアはコンサートでご覧になられた方もおられると思います)。
ここで司会の西寄ひがしさんが登場。
3年ぶりのポップスコンサートですが、前回は文化放送の寺島尚正アナウンサーが司会をしてくださったので、西寄さんにとっては初めてのKIYOSHIのポップスコンサートでの司会ということでした。
赤の縦じまのシャツに蝶タイ、ネイビーのジャケット、ブルーのパンツというカジュアルテイストの出で立ちでした。
「演歌は内に秘めたり、耐えたりする歌が多いので、僕のプロデューサーである長良じゅん会長が、”きよしも発散したいだろう”っておっしゃって、”KIYOSHI”というキャラクターを考えて、河村隆一さんに曲を発注してくださったんですよ」
と、きよしさんは”KIYOSHI”が誕生した経緯をお話しくださると、
「発注って、なんだか本でも注文するみたいじゃないですか(笑)」
と西寄さんが一言。
すでに気負わず、マイペースなきよしさんだったのです。
「僕のなかで演歌は和食で、ポップスは洋食。
おそばもおいしいし、スパゲッティもおいしいなあと思うんです。
会長が”KIYOSHI”をとっても気に入ってくださっていたんです。
皆さん、立ってもいいんですよ。
ああ、見えなくなっちゃう人がいるとよくないですかね。
じゃあ、”脱げ~!”とかいってもいいですか?
僕、ビジュアル系バンドに憧れていて、入りたいと思っていたんですよ。
オーディションもポップスばっかり歌っていて。
それが16歳のとき、演歌に出会って、ころっと”360度”変わってしまったんですよ」
とのきよしさんのトークに、西寄さんが”うんうん”とうなずいていると、
「僕、”360度”っていったでしょ、(西さん、)そこつっこんでくださいよ~。
まあ今日は”360度”変わって、ポップスに戻っています」
とセルフフォローされたきよしさんだったのです(笑)。
次はきよしさんが生まれた1977年(昭和52年)のヒット曲のコーナーになりました。
衣裳チェンジされたきよしさんは、レモンイエローのエナメルテイストの生地でつくられたベストとパンツ、シャツもハイカットスニーカーも同色で、登場された時はレモンイエローのサングラスをかけていて、「満天の瞳」でお召しになっていたサイバー調の衣裳を想起されるものでした。
「イミテーションゴールド」(山口百恵)
「酒と泪と男と女」(河島英五)
「あずさ2号」(狩人)
「渚のシンドバッド」(ピンクレディー)
「勝手にしやがれ」(沢田研二)
と、何色にもきらめく照明よりも遥かに色彩豊かに鮮やかに名曲を歌いあげてくださり、
ここで、おなじみのあの心わき立つイントロが聴こえてきたのでした。
”うーん!”
”うーん!”
”うーん!”
とイントロでうなるヒット曲といえば、おわかりですね。
「情熱の嵐」(西城秀樹)でした。
ステージを縦横無尽に動き回るきよしさんの熱い歌声に、”KIYOSHIコール”が巻き起こって、ペンライトも思いきり縦揺れになっていたのです。
ちなみに「情熱の嵐」は1973年、西寄さんが生まれた年のヒット曲ということでした。
このサイバー調の衣裳は「イミテーションゴールド」のイントロのデジタル調の部分を聴いていたときにわいたイメージでつくっていただいたのだそうです。
歌謡曲の黄金時代の名曲を歌い終えて、
「これからまたそういう時代をつくっていきたいです」
と頼もしいきよしさんでした。
と、突然、「あっちぃ!」ときよしさんが大きな声でおっしゃったのです。
そう、衣裳がエナメルでできているので暑くてたまらなかったのでしょう(笑)。
さらに、
「この素材の衣裳は、気をつけてないと、ここがポコッと出ちゃうんですよ」
とおっしゃって、パンツを整えながら、”ここが”と股○(あえて一文字伏せますね・汗!)をおさえたので、
「そんなことおっしゃると、今度、そこばかり皆さん気になって見ちゃいますよ」
と西寄さんがいさめて(もう遅いですけど・笑)くださったのでした。
ここでの西寄さんは、赤とグリーンのギンガムチェックのシャツにジーンズのサロペットにブルーのスニーカー、カンカン帽をかぶってシマシマの毛皮のしっぽのチャームをつけておられました。
ここで、”プログラムには入っていなかった曲ですが”と、西寄さんが前置きされて、きよしさんが6歳の頃に放映されていたアニメ「愛してナイト」の主題歌「ぼくのジュリアーノ」(平塚たかあき)を歌ってくださいました。
「いっていいですか?」
西寄さんはきよしさん確認されると、リハーサルのとき、「ぼくのジュリアーノ」を聴いて、きよしさんが泣いていたことをお話ししてくださったのです。
「だってね、”♪大好きさ 離れちゃヤだよ”って歌うところがあるんですけど、そこで仲間のこと思いだして。
西寄さんのことも思って...」
と、そこでも涙ぐんでいる様子のきよしさんだったのです。
続いては”1990年代のテレビドラマから生まれたヒット曲”のコーナーでした。
白地に黒の大ぶりの格子柄が入った三つ揃いのスーツ、シャツは黒でノータイ、靴は黒のエナメル、髪はオールバックにされていました。
「君がいるだけで」(米米CLUB)
を軽やかに歌唱され、そのファルセットの伸びやかさで美しい響きにうっとりとしたのです。
そこでミラーボールがきらきら、くるくると回りだし、幻想的なムードに変わったところで、
「LA・LA・LA LOVE SONG」(久保田利伸)
「sweet memories」(松田聖子)
をロマンティックにムーディーに歌ってくださいました。
松田聖子さんの「sweet memories」は、後半、バンドの皆さんのすぐ前に置かれた真白なスタンド式のラウンドチェアに腰かけて、バーにいるような雰囲気を演出してくださって、きよしさんの歌う英語の歌詩の響きにもうっとりとし、外国の街角の風景がうかんだのでした。
ショート丈のジャケットを脱ぎ、
「My Revolution」(渡辺美里)
「星空のディスタンス」(THE ALFEE)
とハイテンションの歌唱で盛り上がったところで、きよしさんはステージの床に右ひざをたててすわったのです。
そこで流れてきたのは、あの曲。
「I LOVE YOU」(尾崎豊)でした。
きよしさんの心のふるえまで感じとれるようなこまやかなファルセットに、涙がこぼれそうになり、聴き惚れずにはいられませんでした。
そしてここでマライア・キャリーさんや数多くのトップ歌手の方がカバーされているハリー・ニルソンの「without you」を全曲英語で歌唱されたのです。
その歌声に聴き入るあまりシーンと静まりかえった客席でしたが、きよしさんが歌い終えるとわれるような拍手と歓声がおこりました。
ここでバンドの皆さんのインストロメンタル演奏。
曲目は「未来」(KIYOSHI)でした。
この日のために2カ月前から打ち合わせをして準備をされてきたそうですが、ポップスの世界で演奏されている皆さんで、ギター、ベース、シンセサイザー、ピアノ、ドラムの5名とコーラスがお2人の7名による”KIYOSHI'Sバンド”(と申し上げてよろしいでしょうか?)でした。
お召しかえされたきよしさんは、白のランニングに白のシャツを羽織って、胸にはビーズの3色ほどの色を組み合わせたネックレス、ジーンズのショートパンツ(裾をカットした織り込んだようなナチュラルテイストです)、素足に白のシンプルなデッキシューズ、右手にはブルーのブレスレットと、帽子をかぶっておられました。
歌ってくださったのは、
「believe~あきらめないで~」(KIYOSHI)でした。
ここできよしさんが自らバンドの皆さんの紹介をされると、
“KIYOSHI”としては9年ぶりの新曲「hug」を披露してくださったのです。
「TM NETWORKの木根(尚登)さんにはプライベートで、かわいがっていただいているんですが、2年ほど前に、電話をしていたときに、”平和を歌って、人を包みこむような慈愛に満ちた曲、つくっていただけませんか?”とお願いしたら、2曲つくってくださったんです。
それで、この曲に決めたら、”じゃあ2曲めは返して”といわれたのでお返ししたのですが(笑)」
きよしさんが、
「詩は僕が」
といいかけると、わあっと大反響。
「と思ったんです。それで書いてみたんですけど、全然まとまらなくて。
それで僕の思いを伝えてプロの方のお力をお借りしました」
と、さらに言葉を継がれたのでした。
そして「hug」をあたたかく優しく、客席の2200人のみならず愛するすべての人たちを包み込むように歌ってくださり、歌い終えると皆を抱きしめるように、ぎゅうっと”エアハグされたのです。
ラストは「人生号 Jinsei-GO」(KIYOSHI)を、アップテンポでステージを全方向に位置を変えてながら歌ってくださいました。
”KIYOSHIコール”がこだまするなか、迎えたアンコール。
ステージの円形のせりが降下するのが見えました。
バンドの皆さんもいったん舞台袖に帰られて、また戻っていらした様子がシルエットで見えたのです。
せりがあがると、そこにはこのコンサートのためにつくられたオリジナルグッズでもあるTシャツにジーンズ、チェックのシャツをウエストに裾を挿しいれた状態で腰下に垂らし、ベージュの革のブーツを履いておられたかと思います。
ここでピアノが、あるメロディーを奏で始めました。
それは、「誓い」(KIYOSHI)でした。
あふれる愛に、時折せつなさをにじませて歌う「誓い」のなんて魅力的な歌唱だったことでしょう。
あらためて、今日のこの日のこのすべてのめくるめく”歌絵巻”のような歌唱が、ほんとうに、ほんとうに”KIYOSHI”というひとりの歌手によるものなのだろうか?
と、自分に問いかけずにはいられなかったのです。
なんて、なんて、素晴らしい、そして稀有な歌手なのでしょう。
「皆さん、ありがとうございました」
きよしさんはお礼をおっしゃると、
「ほんとうにこれで終わりなんですよ~」とおっしゃって(笑)、
「あの、このコンサートではポップスしか歌わないってお知らせしてましたけど、せっかくなので演歌も歌わせていただいてよろしいでしょうか?」
きよしさんは遠慮がちにそう客席に向かってお聞きになったのです。
もちろん、”歌って~!”の大合唱。
きよしさんはにこやかにうなずかれて、
「それではポップスのバンドの皆さんの演奏で、『さすらい慕情』と、先日の『歌謡コンサート』でも、
といいかけると、”うわああ~!!!”とものすごい歓声があがったので、きよしさんは、
「えっ、そんなに? すごいですね、嬉しいですね。
その『男花』を歌わせていただきます」
とおっしゃって、
「さすらい慕情」を歌いだされたのですが、その第一声の響きに、”ああ、氷川きよしの歌声だ”と、今さらながら思ったのです。
”たとえていうなら洋食と和食。どちらも大好き”
とおっしゃったきよしさんの言葉が思いだされて、ほんとうにほんとうに幸せな満たされた思いになっていました。
そしてそして「男花」でした。
ステージで軽やかに舞うように、その心のままに歌う”氷川きよし”の歌唱に、雄姿に、ただひたすらに聴き惚れ、見惚れ、よくぞ今ここに、これほどの歌手が存在し、その歌唱をこうして聴かせていただけるなんて、今日まで生きてきてよかったなあと思わずにはいられませんでした。
また”KIYOSHI”までもを産み出し、”氷川きよし”という歌手を育て、プロデュースされてきた長良じゅんがどれほど素晴らしいプロデューサーだったのかを思い、感謝でいっぱいになったのでした。
また”KIYOSHI”までもを産み出し、”氷川きよし”という歌手を育て、プロデュースされてきた長良じゅんがどれほど素晴らしいプロデューサーだったのかを思い、感謝でいっぱいになったのでした。
きよしさんが「男花」を歌い終えるとバンドの皆さんもステージ前方にいらして、きよしさんを真ん中に横一列に並んでご挨拶され手をつなぎ、その手を高く掲げてくださいました。
バンドの皆さんを見送ると、きよしさんはもう一度、客席にご挨拶され、
「愛してます!」
とおっしゃって、そして大開脚ジャンプ!
そして、いよいよステージ袖に戻ろうとして、思いきりアンプにつまずかれたので、
客席から”きゃあっ!”と先ほどの大開脚ジャンプのときよりも、もしかしたら大きな声が(笑)。
きよしさんはサッと態勢を立て直されると、”驚かせてごめんね”というように微笑まれてから、ステージ袖へと戻っていかれたのでした。
※皆さま、駆け足でのご報告でごめんなさい。
そして歌唱曲された曲はやはり21曲プラスアンコールの3曲で24曲になるかと思います。
昨日いっぱいが締切だった仕事はかなり苦しみましたが、自分で納得のいくものができ、少し前にメールで編集の方に送りました。
今は気分爽快です。
今日は昼夜、参加させていただきます。
今夜は熱いご報告をさせていただきたいです。
またお逢いできますように!