氷川きよし特別公演の大千穐楽にいってまいりました。
毎日大入満員で、この1か月・40公演への来場者は、5万4千人を超えたそうです。
氷川きよし様、
どんなときも応援されている皆様、
共演者はじめ支えてくださったすべてのスタッフの皆様、
千穐楽、おめでとうございます!
忘れ得ぬ感動をありがとうございました。
以下はながれにそってこころにのこったことを書いてみようと思います。
第1部のお芝居「恋之介旅日記」での大詰め、旭座の舞台上でのこと。
セリから姿をあらわした舞台の上段の幕がひかれると、眩しいほどに光り輝く艶やかな嵐恋之介が登場し、扇使いも鮮やかに舞いを披露されますが、引き続きの口上で、涙、涙、涙...。
なんて美しい涙だったことでしょう。
きよしさんが演じる嵐恋之介は、自身の人生を桜に重ねて、自分を待っていてくれる人がいる限り、その腕とのどと顔で、日本全国をまわり、桜のように咲き誇ることを約束されるのですが、その言葉のひとつひとつはまさに氷川きよしの人生...。
1か月40公演の演じ納めという感動と同時に、恋之介の思いにご自身の思いが一体化しての涙だったのではないでしょうか。
この日は客席をまわるシーンで、きよしさんはキッスの大盤振る舞い。
前半、下手側をラウンドされたときに、きよしさんのお人形をさしだされた方がおられたのですが、きよしさんはそのお人形を手にとられると、”Chu!”
もう~、大歓声がおこりました。
そして、舞台にあがる手前で、もうおひとり、お人形をさしだされた方がいたのですが、そのお人形も手にとられて、”Chu!”。
なんだかドキドキしたのです。
後半のラウンドでは早々にお人形をさしだされた方がおられたのですが、そのお人形にも”Chu!”。
さあ、そのあとがもうタイヘン(汗)。
掲げられたお人形はもちろんのこと、ボード、うちわ、タオルにまで、”Chu ! Chu! Chu! Chu~!!”とキッスの大盤振る舞い。
客席では、そのたび”キャーッ!”と歓声がおこったのです。
”やまびこのシーン”では、きよしさんの、”♪やだねったら”に”やだね”という大きなやまびこがこだますると、もう一度ためされて(笑)、
さらに、
”♪やっぱりね”と歌われると、”そうだろね”とやまびこが答えたので、
きよしさんはそのままつづけて、
”♪しんどいね”と。
もちろん、”未練だね”という嬉々としたやまびこがこだましたのです(喜)。
一瞬、のけぞるようにして喜ばれたきよしさんは、嬉しそうに拍手をしてくださったのです。
曾我廼家寛太郎さんが、”やまびこ”って普通、山のなかだと思いますけど、ここ茶畑ですよ~”とアドリブでおっしゃっていたでしょうか。
西寄ひがしさんが店主を演じる茶店でも、千穐楽ということで三色団子がふるまわれて、きよしさんはさっそくいただいたのです。
でも、そのお団子がのどにつかえてしまったようで(汗)、その様子にハラハラしながらも、きよしさんがひょうきんにふるまわれたので爆笑となったのです。
でも、そのお団子がのどにつかえてしまったようで(汗)、その様子にハラハラしながらも、きよしさんがひょうきんにふるまわれたので爆笑となったのです。
「あのう、お茶をもう1杯いただけますか?」
との恋之介に、急きょスタッフが急須を西寄さんに手渡されたのでしょうか。
きよしさんの湯飲みにお茶がそそがれたのですが、あの急須、多分、江戸時代には存在していなかった素材のものではなかったかと(笑)。
そして稲葉雅楽頭を演じる加納竜さんと、その家来(側用人でしたっけ)の松山将監役の高橋佑一郎さんの仕込みたっぷりのアドリブにも場内大爆笑。
なにかにつけ、”この腹、掻っ捌いて”と決死で大真面目な松山に、”切るな!”と諫める稲葉雅楽頭なのですが、この日は、”切れ、千穐楽だからな”と(汗)。
松山役の高橋さんが驚きとまどった様子だったので、なんだかドキドキしたのですが、容赦なく”切れ!”と加納さん。
”では、練習させてください”
とおっしゃって、高橋さんは剣を突き立てるのですが、
”あれ?”
と、胸元に手をいれられ、なにかをひっぱりだされたのです。
それが、公式グッズのきよしさんのうちわだったものですから、場内大爆笑。
”この方にはとても歯(刃)が立ちません”
と高橋さんがおっしゃったでしょうか。
加納さんはその言葉にうなずかれ、”よし、帰ろう”とおっしゃって、おふたりは舞台袖へともどっていかれたのです。
このやりとり、正直、どうなるのかしら? とハラハラさせられて...。
やっぱりおふたりの演技の力ってすごいなあと思わされました。
曾我廼家寛太郎さんは、大立ち回りのクライマックスシーンで、
”大晦日の歌合戦、楽しみにしとるんや”
と絶妙のアドリブ!
出演者の皆さんのきよし座長の千穐楽をいっそうもりあげようという思いに胸熱くなったのです。
あふれる涙をこらえながらも見事に口上を言いきった”きよし・恋之介”に、万雷の拍手。
そして、
”恋之介、日本一!”
という声が明治座にこだましました。
拍手と”恋之介コール”につつまれ、笑顔で手を振る”きよし・恋之介”の笑顔は、桜のように鮮やかで、日の光のように眩しかったのです。
※千穐楽のコンサートの様子が明治座さんのTwitterにアップされていました。
「千穐楽、イェーイ! イェイ、イェイ、イェイッ!」
第2部の”氷川きよしコンサート2018 in 明治座”のオープニングで、きよしさんは、「勝負の花道」を下手側でワンコーラス歌われると、そうおっしゃりながらセンターから上手へと移動されました。
歌い終えるとあらためて来場のお礼を言葉にされると、
「初日は台風直撃の日でしたけど、たくさんの皆さんにお越しいただいて、背中をおしていただいてスタートすることができました。
1か月、ほんとうにあっという間で、楽しくて、幸せな時間でした。
今までのなかでいちばん楽しかったです。
日々、自然体で。
また、恋之介に逢いたいなって思います。
皆さんにかわいがっていただいて育てていただいた”恋之介”です。
”恋之介 Part 2”ができたらなって思います。
今日は最高ですね~。
皆さんのまごころが(ぼくのなかに)はいってきて...。
それをどうやって倍返ししようかなって。
今回、貸切公演何回かありまして。いかにふだん皆さんにかわいがっていただいているのかを感じました。
僕がなにをしても喜んでくださるでしょう。
でも、それに甘えていちゃいけないんだなって。
(貸切公演のときは)スーツの方とかたくさんお越しになっていて、最初はシーンとしていたんですけど、一生懸命歌っていたら、だんだんたくさんの拍手と歓声をいただいて。
ああ、まごころこめて歌っていたら、ちゃんととつたわるんだなって思わせていただきました」
と、1か月公演への感慨をお話しされました。
きよしさんは、”言いたいことはもう言えた”と思われたのでしょうか、そこから一気にハイテンション!
「今日は最後なので、思いっきりやります」
とおっしゃると、
「遠慮はいらないよ~!」
「みんな、自由だ~!」
と呼びかけられたので、そのたび、”イェーイ!”と!客席から大きな声がおこったのです。
そして、ニューアルバム「新・演歌名曲コレクション8-冬のペガサス-勝負の花道~オーケストラ」の表題曲の「冬のペガサス」について、
「ぜひ、家で、『冬のペガサス』の詩を読みかえしていただきたいです。
そこに僕の今の思いが描かれています。
今日は歌わないんですけど、フォーラムでは歌いたいと思っています」
とおっしゃいました。
熱唱がつづいて、こころとろけて...。
「愛の讃歌」には、この日もやっぱり涙がこぼれて...。
感動でしびれている頭の奥で、きよしさんに出逢えて、ファンでいることの幸せをあらためて思っていました。
そして、このままずっと終わってほしくないような思いになっていたのです。
ゴールは目前。
でも、このまま走り続けていたい...。
西寄さんがまだお話しされているときに、すでに袴姿でセットの裏側にスタンバイされているきよしさんは、この日も上階の皆さんに手をふられていました。
「男の絶唱」
を歌われると、西寄さんをまじえてのトーク。
「千穐楽ですよ~。
ねーっ。
ほんとうにあっという間で。もう1か月くらいやれそうです。
今まででいちばん元気ですよ。
ストレスフリーだったから。
恋之介があっているというか、自然体で演じられたんです。
今日は皆さんの熱がすごくて...。
普通、体温は36度5分くらいでしょう?
でも、皆さんの体温が45度くらいに感じるんです」
とのきよしさんの言葉に、
「45度っていったら病院にいかなくちゃなりませんよ(笑)」
と西寄さんがおっしゃると、
「歌っているからこそわかることってあるんです。
そんなふうに感じるくらい皆さんと歌でつながっているんだなって思って。
あらためて歌と出会えてよかったと思いました」
とさらにその思いを熱く語られたのです。
そして、第一部のお芝居の大詰めでのきよしさんの涙を西寄さんが話題にされると、
「いやいや違います。目ヤニです」
ときよしさん。
照れてしまわれたのでしょう。
”目ヤニだなんてそんなことないでしょ”という西寄さんはじめ皆の視線に、
「雨粒です。
雨が降ってたの! それだけっ!」
と。
かつて、きよしさんのおじいさまが、涙をながされていたときに、”これは雨粒たい”とおっしゃったことを、きよしさんがお話しくださったことがありましたね。
きよしさんの瞳をぬらした”雨”は、わたしのこころにしみこんで、大粒の涙がたくさんこぼれたのです。
嬉しい嬉しい涙、そう、嬉し泣きでした。
嬉しさに涙がこぼれる、そんな幸せな思いをきよしさんにさせていただけて、ただただ感謝の思いでいっぱいになったのです。
「宮崎でののど自慢の翌日から稽古にはいって、(稽古期間が)1週間でした。家で台詞を呪文のように何度も練習して。
舞いや殺陣も練習(おさらい)しました。
あらためて感謝の思いでいっぱいです。
毎日3階席までお客様がいてくださって、ありがたかったです。
僕のなかでは、3階席は、”つむじ見えコース”。
つむじまでみえて、全体が見渡せるんですよ。
1か月間、絶対に穴をあけられない。なにがあっても這ってでも出てやろうっていう思いでいましたから。
今日の日を皆で元気に迎えられてほんとうにありがたいです」
きよしさんがそんなふうにおっしゃると、そんな決死の覚悟で挑まれた日々のなかにも、たくさんの楽しい出来事もあったことを西寄さんがお話ししてくださいました。
きよしさんは、毎日、お忙しいのに、炊き込みご飯を炊いて、座組の皆さんにふるまわれていたそうですが、高田文夫先生が松茸をくださって、その松茸でも炊き込みご飯をつくられた話題になったのです。
「高田文夫先生が明治座に来てくださったんですけど、先生は公演をご覧になるとそのままお帰りになって、楽屋に寄ったりされないんです。
今回も”高田文夫”ってシールが貼ってあったので、高田先生からだってわかったんですけど。
あのちり紙みたいなのに包まれていて」
とのきよしさんの言葉に、
「乾燥しないようにデリケートなものを包むんですよ」
と西寄さんがフォローされると、
「デリケート、デリケートゾーン!」
と、嬉々としておっしゃったきよしさん。
ここぞとばかりに、デリケートゾーンを掻く仕草をされながら、
「カイカイッ!」
と(汗)。
もう~。
西寄さんもなすすべがないながらも、
「千穐楽だけですよ~」
とフォローされたのですが、
「それもわたしです」
と、オープンハートどころか、ハート全開のきよしさんだったのです(嬉)。
乾燥アサリ、干しエビの炊き込みご飯もつくられたそうですが、
「味が薄いのもあって。
料理を一から勉強しないとって。
やっぱりおいしいものをつくりたいですからね。
僕、料理が好きなんですよ。
子どもの頃、友だちもあんまりいませんでしたし、話すことが苦手だったから、ひとりで料理するのが好きだったんです」
とおっしゃっていたきよしさんでした。
ここで、ニューアルバムのインフォメーションをされると、そのながでて、大評判の”モノマネヒットパレート”に(嬉)。
山本リンダさん、美川憲一さん、北島三郎さん、森進一さん、小林幸子さん、ちょっぴり山内惠介さん、美輪明宏さんとつづいて、抱腹絶倒(笑)。
さらに、都はるみさん、五木ひろしさんとつづいたのですが、いやん、きよしさんのお顔が五木さんモードからもどらなくなってしまって(笑)。
またまた大爆笑したのです。
「モノマネは今日で見納めです。
ほかではやらないけど、明治座ではまたやりますよ!絶対!」
ときよしさんは約束してくださると、シメは美空ひばりさん。
ひばりさんが憑依していかのようなトークにつづいて、そのあとに歌う「きよしの人生太鼓」の数フレーズをひばりさんモードでアカペラ歌唱してくださる大サービスでした。
「きよしの人生太鼓」を歌われると、あらためて来場のお礼を言葉にされ、
「モノマネは明治座で終わりです(笑)。
無事に今日の日を迎えられたことを幸せに思います。
あらためて多くの方に支えていただいてこうして歌うことができるんだと思いました。
僕からう歌をとったらなにもないですからね。
こうして歌えることの幸せを感じています。
劇場公演て素敵ですね~」
きよしさんは、劇場公演が”素敵”とおっしゃったことにわたしはじんときていました。
「初めての劇場公演は24歳のときでした。
事務所の会長に、”おまえ、1か月やるぞ!”っていわれて。
自分、時代劇なんてやれません。
刀、怖いです。
カツラ、つけたくないですっていって。
今思うと若さだったなって思いますけど(笑)。
コマ劇場で(初めて)やらせてもらうことになったとき、チケットがすぐに売り切れたってきいて。
それを嬉しいと思う余裕がありませんでした。
嬉しさより、プレッシャーでした。
どうしよう、自分。
どうしたらいいんだろう。
なにをしたらいいんだろう。
お客様に喜んでいただけるためにどうすればいいんだろうって...。
(その葛藤のなかで)、もう一生懸命やるしかないって思ったんです。
とにかくどんなことでも挑戦して一生懸命やることで成長できるんだってことをしりました。
今、あらためて時代劇の良さを感じます。
人情があるんですよね。
これから、そういうものを表現していきたいと思います。
そして、僕、形式や枠にはまるのが苦手なので、氷川きよしらしく自由に歌で表現していきたいです」
アンコールの最後の曲「きよしのズンドコ節」までを歌い終えると、いよいよの大エンディング。
拍手と歓声につつまれて、1か月40公演の幕がおりたのでした。
その後、緞帳が降りたままの舞台袖に西寄さんが登場され、お仕度ができ次第、カーテンコールにという案内してくださいました。
「勝負の花道~ビクトリー」のイントロが奏でられるなか、緞帳があがると、この日の全出演者31名が勢ぞろいされていて、
西寄さんが、「本日、ご出演のすべての皆さん。全40公演を走り抜けた笑顔です」とおっしゃったのです。
前列に並ばれているキャストの皆さんが順番にご挨拶されていったのですが、作・演出の池田政之先生もお越しになっているとのことで、ステージに。
控えめな方で役者さんの端っこにいらしたのですが、きよしさんに乞われて、いったん中央へ。
「お疲れ様でございます。
今回の脚本を書くにあたって、これまで氷川さんの舞台を観させていただいたことはありましたが、さらに失礼ながら観ていなかったものもビデオでみせていただいたんです。
それで、とにかくファンの方が素晴らしいので、ファンの方が喜んでくださるものをつくろうと考えたんです」
とのご挨拶に、大きな拍手がおこりました。
きよしさんの魅力を存分にひきだしてくださり、きよしさんご自身が自然体で演じることができたとおっしゃるほどの素晴らしいこの作品をよくぞ書いてくださいました。
そんな素晴らしい池田先生ですが、ご挨拶されると、ふたたび、”ここのほうが落ち着きます”と、役者さんの端っこにもどられたのでした。
恋之介の”おっかさん”役の栗田よう子さんは、きよしさんと片寄せあったり、抱き合うシーンがあることで、ファンの方に申し訳ないと気にされていたということでした。
そのことをおききになったきよしさん、
「大丈夫ですよ~。
ファンの方、良い方ばかりですから」
と即答されていました。
そして、加納竜さんは、
「”なんとなく”の加納竜です」
とご挨拶されると、”氷川くんのおっかさ~んがやってみたかったんです”と。
加納さんは、きよしさんが客席をラウンドされる際、”おっかさん”と呼びかけると、”はーい”と客席から返事がかえってくるあのシーンにトライされることになり、大成功したのです。
曾我廼家寛太郎さんは、
「大津から江戸への旅日記。氷川さんとお客様と一緒に綴れたことが嬉しいです。
もう、入れ墨いれなくていいんですけど、このあとは”恋之介命”っていれたいですね」
と。
今回の共演で3回目とのことですが、きよしさんは、”5回目くらいの気がするんです”とおっしゃっていました。
西寄さんの言葉を借りれば、氷川きよし一座になくてはならないベストパートナーですよね。
山村紅葉さんは、
「これまでの舞台で、いちばん多くのお客様がお越しくださり、いちばん多くの拍手をいただいて。いちばん笑っていただきました。わたし、氷川さんてもともとタイプなんです。
ご一緒できてゾッコンです。
今もFCにはいろうと思って1万1千円にぎりしめています」
とおっしゃってくだいました。
きよしさんは紅葉さんに色紙をいただいたそうで、
「嬉しかったですね~。額をかって家に飾ります」
とおっしゃったのですが、
紅葉さんは、
「社交辞令ですよ~」
と謙遜。
すると、きよしさんは、
「自分、社交辞令とかいわないタイプなんで」
と、本音発言。
紅葉さん、そんなきよしさんに、ますますゾッコンですね(嬉)。
そして、ベンガルさん。
ベンガルさんはきよしさんのことを、”きよちゃん”と呼ばれているのですね。
「今日はきよちゃんの涙、見たんで。意外でしたけど。
流し目も1か月やると、このへん(首筋をおさえて)が痛くなってきて。
毎回、きよちゃんを笑わせることをテーマにやらせていただきました」
とお話しされましたが、この日はダイコンとニンジンのヘタをお顔に付けてくださっていました。
きよしさんは、皆さんの思いを一身に受けて、皆さんへの感謝の思いを言葉にされると、
「とにかく無事故で全員が元気にこの日を迎えられたことが嬉しいです」
とおっしゃいました。
座長らしい、皆を思いやった言葉に、おこがましいかもしれませんが、でも、大きな大きな成長を感じて、胸がいっぱいになったのです。
きよしさんは、後列の皆さんにもひとことご挨拶をとすすめられようとしたのですが、ご挨拶すると思っていなかったので準備されていないことを西寄さんがおっしゃってフォローされました。
「出演者、おひとりおひとりが主役です。誰一人欠けてもできませんから。
そして、お客様おひとりおひとりも主役です」
と、きよしさんはそんなふうにおっしゃっていたかと思います。
そこで西寄さんがまとめようとされると、きよしさんは西寄さんにもご挨拶を勧められたのです。
「えっ、いきなりの無茶ぶりですねっ」
とおっしゃった西寄さん。
この日のコンサートのトークのなかで、きよしさんのおかげで、”役者でもない自分まで舞台に立たせていただけて幸せです”とおっしゃっていたのです。
西寄さんは、きよしさんの”まさかの無茶ぶり”に、
「ええと、じゃあ」
と前置きされると、
”あなた様がそのように偉い方だとは存じておりませんでした”と、劇中の台詞(言葉どおりじゃなくてごめんなさい)をおっしゃったのでした。
そして、
「最後は”氷川きよし”座長らしく『きよしのズンドコ節』でまいりましょう!」
と西寄さんがおっしゃると、イントロが奏でられたのです。
最初は、”皆さんで歌ってください。僕は歌いません!”とおっしゃっていたきよしさんでしたが、いざ歌う段になると、ごく自然にボリューム抑えめで歌ってくださいました。
割れるような拍手、歓声。
客席と舞台の皆さんが手を振りあうなか、いよいよ千穐楽の幕がおりたのです。
終演後は出待ちをしました。
ちょうど楽屋口に近いところだったので、きよしさんを待つ間、共演者の皆さま、演奏のHKピュアリバ―の皆さんをお見送りすることになったのです。
と、そこに池田先生が。
目があったので、思いきって
”楽しい舞台でした。ぜひPart2をお願いします”と申しあげると、
”どうもありがとう”と言葉を返してくださいました。
なんか、なんか、すご~く、期待しちゃいます(嬉)。
でも、その前に来年の新歌舞伎座でもう一度”恋之介さま”に逢えるのですよね。
と、そこにきよしさんを乗せた車が。
きよしさんは帽子をかぶって、シルバのメタルフレームのメガネをかけておられましたが、そのメガネの奥のまなざしに、幸せがあふれているのを感じたのです。